「要約すれば、ほとんどすべての主要な社会的制度は宗教から生まれた、といっていい。ところで、集合生活の主要な側面が、最初は、まず、宗教生活のさまざまな諸側面にすぎないというからには、明らかに、宗教生活は、集合生活全体の卓越した形態であり、いわば、その集中的表現でなければならない。宗教が社会の本質的なものを生み出したとするならば、それは、社会の観念が宗教の魂だからである。
　したがって、宗教力は、人間力であり、道徳力である。もちろん集合的感情は、外的対象に固着してでなければ自らを意識しえないから、宗教力は事物から自己の特色あるものを取り入れずには構成されなかった。すなわち、こうして、一種の物理的性質を獲得したのである。」（下、327～8頁）

　デュルケムによれば、「社会的事実」とは、個人のうえに外部的な拘束をおよぼすもので、個人的な表現物とは独立したものなのだが、宗教が人類の歴史において、はじめてそのような社会的事実をつくり出したものとみなしている。デュルケムが分析した原始宗教にあっては、宗教的礼拝において、社会を構成している諸個人が集合し、共同で行動することになるが、これによって社会が自らを意識していく、と見たのだ。人類が最初の共同行動を組織的に行うことで社会を「主体」として目覚めさせたものとして、宗教が捉えられている。
　次にデュルケムは論理的思考の起源をたずね、それを宗教によってつくり出された集合的意識に求めている。集合的意識によって、ある種の「主体」となった社会は、やがて非人格的かつ組織化された固定した思考（論理的思考）への道を拓き、長い歴史的過程を経て、「論理的組織は、社会組織から分化し、自律的となる」（下、372頁）というのである。

「非人格的な理性が集合的思考に与えられた別名にすぎないことを、人が認めるとき、あらゆる神秘は解消する。というのは、集合的思考は、個人の集団によってのみ、可能だからである。集合的思考は個人を前提するものであり、個人は集団をなさなければ維持できないから、個人もまた集合的思考を前提しているのである。目的と非人格的真理との王国は、特殊的な意志と感性との協力によってのみ実現される。また、この王国に特殊な意志と感情とが参加できる理由は、まさに、それらがその王国に協力する理由と同一である。つまり、われわれには社会的なものがあるから、われわれには非人格的なものがあるのである。しかも、社会生活は表象と実践とを同時に含んでいるから、この非人格性は、まったく当然にも、観念にも行動にも拡充していくのである。」（下、373～4頁）

　社会と社会的事実としての集合的意識についてのデュルケムのこのような考えは、一部にデュルケム学派を形成したが、他の人々には受け容れ難いものだった。ピアジェはデュルケムを評して、次のように述べている。

「社会というものを『集合意識』という単一の全体に解消し、社会の働きを物理的または精神的な『拘束』という単一のプロセスに解消する」（『ピアジェ・ワロン論争』ミネルヴァ書房、109頁）。

　デュルケムの学説には、たしかにこのように批判される根拠はある。しかし、ワロンは、デュルケムの学説について内在的なコメントをしている。ワロンのコメントを紹介するところから、われわれ自身の社会形成論を構想していきたい。

2）アルプバックスの説

　ワロンは「子どもの心理学的研究と社会学的研究」（『ピアジェ・ワロン論争』所収）で、ピアジェの発達論の批判を試みているが、その前段で、心理学的観点と社会学的観点についての学説の整理を試みている。ワロンはまず、フランスの心理学研究で支配的な個人主義的立場を検討し、それが「自身の内に閉じた個人の存在を前提としている」（83頁）とみなして、この説を批判的に紹介した上で、次に社会的立場として、デュルケムに始まり、彼の弟子たちの説を紹介している。そこで、ワロンのデュルケム派の批判的紹介に注目しよう。
　ワロンはデュルケムの説が「集団的表象」（集合的意識）に独占的役割を与え、個人が理解したり、観察したりできる表現可能なすべてのものは、個人でなく社会に由来するものとみなしていると捉えている。そして、デュルケムは、信念の体系があってはじめて集団は存続することが出来ると考えたが、しかし、デュルケムは、観念の儀式的、概念的画一性にしか注意を払わなかったとし、次のような批判を提起している。

「もし、諸個人を互いに結びつけることのできる感じ方やリズムという接着剤がなかったなら、集団それ自体はどのようにして存在できるのだろうか。また、もし、集団の中の諸個人に次々と呼び覚まされ伝わっていく調和的な反応――このような調和的反応については、デュルケム自身が未開人における宗教的事実を研究した際に観察し、詳しく報告している――がなかったなら、集団はどのようにして存在できるのだろうか。観念が開花する基盤を各個人の中に作り上げているのは、こういう事実なのである。こういう事実こそが、まさに、観念を個人的なものと考える心理学に道を開くものなのである。」（84頁）

　ワロンは個人の意識を考察する際に、個人と社会という互いに対立する二つの極への分極化を統合しようとし、社会的立場をそれとして評価しつつも、しかし、デュルケムの場合、観念が社会的なものであることを主張したこと自体はよいとして、それだけでは集団が集団として存続しないと批判している。そして、観念がすでに社会的なものとして成立している社会にあっても、諸個人を互いに結びつけることの出来る感じかたやリズム（ワロンの言う情動）という接着剤がなければならず、そして、この事実にもとづいて、個人主義的立場の心理学が生み出されているというのだ。
　このような批判を投げかけたあと、ワロンは、デュルケム学派のアルプバックスとブロンデルの説を紹介しながら、社会的立場の豊富化を試みている。ワロンによれば、アルプバックスの説は次のようなものだった。

「アルプバックスは、精神の中に何かあるものを浮かび上がらせようとするどんな試みも、時間あるいは空間の中にそのものを位置づけるなんらかの能力を前提としていることを証明しようとした。つまり、そのことは、識別の利用ということであって、私たちの生きている社会だけがその識別の道具となる観念を私たちに与え、その識別が行われる機会を私たちに提供してくれるのである。こういう準拠を取り除いてみよう。そうすると個人的なものはなにも残らないか、あるいはわずかながら残り得たとしても、それは表出不能か個別化することができないままであろう。」（85頁）

　ワロンは、アルプバックスがそれまで心理学者たちが、本質的に個人的なものであり生物学的レベルの事実と見なしていた記憶という現象が、実はそうではなくで、社会学的主張を裏づける現象であることを示そうとしたと見ている。その際、デュルケムのいう集合的表象という社会的次元の創造物がなければ、個人という知的存在もありえない、という説をふまえているが、しかしアルプバックスは、「個人に自発性の存在することを忘れなかったし、社会的準拠は内容に形式を与える手段となるだけだということも忘れなかった」（85頁）という点でデュルケムとは異なっていた。ワロンは次のように述べている。

「そもそもの出発点には、それぞれの個人の欲求をともなった、その場その場で多様な表われかたをする感受性を仮定しなければならない。デュルケムは、個人を、社会からその観念ばかりでなく感じ方までも受け取る単なる行為者とみなしているようである。彼は感覚を、個人から個人へのコミュニケーションを可能とする交換の方法に還元してしまう。アルプバックスはこういう極論に陥ることはなかった。彼の場合は、個人とか個人的な責任という余地を残しておく。」（85頁）

　このようにワロンは、アルプバックスによるデュルケム説の修正について好意的に評価している。

3）ブロンデルの説

　ついで、このアルプバックスの説に基本的に同意しつつも、独自の見解を述べたブロンデルについて、ワロンは非常に興味のある紹介をしている。ブロンデルは「同じくらい重要な二つの要因、つまり、心理的なものと社会的なものを区別すべきだ」とし、「個人とはこの二つの実在の交流する場」（86頁）とみなしたというのだ。だから、個人のなかに社会的なものを認めるという点に関しては、ブロンデルもアルプバックスと同じようなことを述べているが、それにとどまらず、意志の領域についても社会的なものの痕跡を見たとしている。

「ブロンデルは、大部分の心理学者や形而上学者のように、意志的行為を個人の自発性の一番間違いのない表われと考えたりはしなかった。また、主体の自律性がそこに最もよく実現された表われ、あるいは主体の自律性という幻想を最もよく生じさせる表われと考えたりもしなかった。そうではなく、彼は意志行為の中に、本来、共通意識に近い位置にある動機によって最も説明しやすい行為、それゆえ最も画一的な行為をみた。反対に、日常の規範に照らして自分の行為を点検する以前に反応してしまうというような、自分の本性に身を委ねてしまう場合、私たちは、衝動とか、意志から独立した反応とか、説明不能な偶発事などについて語ることになろう。したがって、個人は、最も自由であると自分で思っているときこそ、何よりもまず社会的要請によって導かれているのである。」（86～7頁）

　ワロンの紹介によれば、ブロンデルは、意志行為のうちに社会の規範への順応を読み取っているようだ。個人が最も自由であると自分で思っているときこそ、何よりもまず社会的要請によって導かれている、という考え方は、物象化論に接近している。しかし、もっと興味深いのは、個人の心理的なものについての次のような考え方だ。

「ベルグソンの心理学にしたがい、ブロンデルは、外界に由来するあらゆる決定作用を心理的なものを変形する作用とみなす。ベルグソンが心の機械化だとして述べているこの決定作用は、ブロンデルにとってはちょうど社会的装置のはたらき――儀礼的、言語的、イデオロギー的、法的、歴史的装置のはたらきなど――をあらわすものである。それゆえ、ブロンデルは、私たちの生活の中にある、習慣、意見、説明、動機づけなどのすべてのものを外部に起源をもつものとして抽出する。こうして、あとに残ったものが心理的なものということになる。ブロンデルはこれを『純粋に心理的なもの』とみなした。この純粋に心理的なものは、ブロンデル自身に言わせれば、自己に引きこもり、外界とのあらゆるつながりを失ってしまった場合、病的なものとなる。」（87頁）

　ブロンデルはここで、心理的なものと社会的なものの交流する場としての個人の心理から、社会的なものをはぎとっていって、最後に残るものを「純粋に心理的なもの」と名づけ、これは病気の状態で表出されると見た。この点についてワロンはひきつづき述べている。

「実際、純粋に心理的なものは、病理的なものが生み出すこの自閉的な意識状態の中にしか現われない。だから、もし純粋に心理的なものを見出したければ精神病者を見にいけばよいだろう。彼らは社会の中では部外者のようになってしまっているが、同時に、内部からは非常に強い感覚圧力を感じて生きている。彼らはもはや共通の思考の決まりに順応できなくなっている。自閉性によって外界の影響から閉ざされた精神病者にあっては、了解不能な言語が観察される。その言語は、知的教育のなごりが感じられる話しかたで話される場合もあるのだが、混乱していて、奇妙でばかげた、全く意味不明の形態をとるのが普通である。だから、精神異常の中に見出される心理的なものは、私たちが通常、社会生活に参加している正常な個人の心理学として考えているものとは、何の類似点もないのである。」（87～8頁）

　ワロンによって紹介されているブロンデルの説によれば、心理的なものと社会的なものとが交流する場としての個人の心理は、必ず社会にも起源をもっているが、自分にひきこもってしまった病的な個人にとっては、「純粋に心理的なもの」が表現されるという。だが言葉で表現されたとしても意味は全く分解している。ひきつづき、ワロンの紹介をみよう。

「こういう意味の分解がおこるのは、表現不能な純粋に心理的なものをあえて表現しようとする、およそ不可能な内的要請に応じようとするからである。ブロンデルによれば、純粋に心理的なものとは、本質的に主観的なものであり、その主観的なものは個人の正常な生理の中では大いに抑圧されてしまうため、社会生活によく適応した人間の意識には全くのぼらなくなる。この純粋に主観的なものを見出そうとすれば、その感情的基底を探らなければならない。ただ精神病患者だけが、その感情的基底を意識にのぼらせることができるのである。」（88～9頁）

　このようなブロンデルの説にワロンが同意しているかどうかは明らかではない。人間の心理についての一つの仮説としてなら、認めているようだ。

4）ゲシュタルト心理学の陥穽

　ワロンは、個人主義的立場と社会的立場についての諸説をまとめたあと、全体主義的立場として、フィヒテとゲシュタルト心理学の紹介をしている。フィヒテについてはともかく、ゲシュタルト心理学については、その指導的メンバーがドイツを追放されたあと、ナチズムによってその学説が利用されたとワロンは述べている。

「ナチズムは個人を集団に解消するためにこの学派を利用した。個人は一つの要素、一つの部分にすぎず、それだけでは固有の意味をもたない。個人は、個人が組み込まれている全体によって存在価値を与えられるのだから、そこでは、個人は多かれ少なかれ置き換え可能なものなのである。個人を全体の中の他の要素（他者）に結びつけるためにかきたてられる感情は、情動的融合の感情であり、その感情が極端なところまで高まれば自我を忘れ他者を忘れる状態にまで至る。構造が至上のものであり、それは部分の中には見出し得ないものである。実際のところ、諸個人のこうした集合は社会ではない。それは群れである。そこには常に、同じような非人格的な融合、同じような野蛮な混同心性、同じような分析能力の欠如が見られる。出発点が個人であれ集団であれ、結果はいつも個人でも社会でもない、全体的で群居的な何ものかとなる。」（92頁）

　ワロンは情動が人々の間に伝染して社会的なものを作り出すことに注目しているが、この見地から、ナチズムを社会ではなく群れと捉えている。個人と社会との関係づけのない単なる一体感を組織すると、その集団は社会とはならず、単なる群れとなる、というのだ。これは非常に重要な問題提起である。
　さて、当初の予定では、社会的立場の紹介にとどめようということだったが、ワロンの積極的な見解を知るためにも、ひきつづき章をあらためて、ワロンのピアジェ批判を見ておこう。

第2章　ピアジェ批判

　ワロンは自らの研究方法について次のように述べている。

「子どもの研究は子どもが育つ環境（一つの場合も複数の場合もある）の研究を必要とする。そうでないと、子どもが環境から恩恵をうけている部分と、子どもの自生的発達といえる部分とを正確に決定することができない。だからといって、二つの部分が相並びあって別々に貢献しているということではなく、二つの要因のそれぞれが他方の中にある潜在的なものを現実のものとしていく、その具体化の過程が問題であると思われる。」（92頁）

　このような見地から、ワロンはピアジェの発達論を、最初の新生児のときの自閉性からやがて自己中心性をむかえ、外界に自分自身の主観性を浸透させるアニミズム期を経過するが、その後、自己中心性が減退し、客観的な認識能力が発達していく、とまとめたあと、「絶対的な個人主義から出発して、ピアジェは知能の発達を社会的な意識の発達に従属させている」（95頁）と批判している。
　ピアジェによれば、「知能が客観的なものとなるのは社会化によってである。社会は精神発達のある一時期に子どもに介入するようになる」（95頁）というのだが、この考えは観察のデータに一致していないとして、ワロン自身の見解を次のように対置している。

「彼らのテーゼは、子どもとその環境との実際の関係に合致しない。その関係は、単純な連続ではないし、純粋の推論や知的直観に基づくものではない。むしろ子どもの生は、はじめから、その環境と混ぜ合わさったような関係にあり、精神現象のあらゆる平面の作用や反作用が両者の関係を媒介しているのである。」（96頁）

　ワロンはこのようにピアジェを批判していく前段で、ピアジェがブロイラーから借りてきて、新生児の最初の状態とした自閉性についてブロイラーにさかのぼって、その概念を規定している。

「ブロイラーによれば、自閉性は、あらゆる正常な個人とその環境を結びつけているきずなが断絶することによっておこる。…… 患者は、次第に世界から切り離され、…… 自分の活動がばらばらになることによって無力になり、もはや、自分の興味とか、最も原始的で最も内奥の感受性とか、感情的な、あるいは身体内的な印象にしか従わなくなる。その結果、しばしば奇妙な常同行動が現われる。こういう常同行動は、それが生ずる感情的核にまで深く切り込んでいくことが難しいので、了解不能なものとなる。言語そのものは、相互理解の追求というその機能から切り離され、今や、意識の唯一の対象となった身体内的な感覚という表現不能なものをあえて表現しようとする欲求によって支配される。その結果、言語は変貌し、新語で満たされ、通常の意味の歪曲が生じ、ついには理解不能となる。自分だけに心を奪われるから、患者は、もはや、周囲に対して、無気力になるか、防御反応や拒否や否定の身振りによってしか反応しなくなる。」（93～4頁）

　自閉症をこのように規定するならば、ピアジェが新生児に見出そうとしている自閉とは全然違うことに、ワロンは注意を促している。「分裂病患者の他者に対する拒否的態度あるいは無関心と、幼い子どもが周囲と取り結ぶ生き生きした関係との間には、本質的違いがある。」（96頁）と。そして、新生児が人間的環境に依存することによってしか生きられないことに、子どもの社会性を見、そして、それは決して自閉性と見るべきではないと主張しているのだ。だから、子どもに最初に役立つ関係は物理的世界との関係ではなく、人間との関係であり、子どもの社会性とは、大人の社会性とは異なるが、独自の社会性をもつ存在だとワロンは考えている。

「子どもに最初に役立つ関係は、物理的世界との関係ではない。物理的世界との関係が現われるときには、その関係ははじめは純粋に遊戯的である。そうではなく、子どもに最初に役立つ関係は、人間との関係、理解の関係である。その関係に必要な道具が表現手段なのである。こういうわけで、子どもはたしかに社会の意識的な構成員ではないかもしれないが、やはりもともと全面的に社会に向けて方向づけられた存在なのである。」（97頁）

　ワロンによれば、子どもは他の人間から働きかけられる存在だ、ということになる。主体としては自立していず、その場面に解け込むことで他からの働きかけを受け取る。人間が主体として自立するのは、自我を確立することによってだが、そして、自我の確立が本当の意味での主体としての自立ではない、という保留をつけた上でだが、自我を獲得していない子どもは、他人から主体として見られ、そのようにあつかわれることで成長していける。ワロンは、このような新生児のコミュニケーション能力を情動に求めている。

「私は、折りに触れて、最初の数ヶ月から子どもの情動的反応と周囲の反応とがもつ重要性について強調してきた。こういう重要な意味をもつ両方の反応によって、ある種の感情的な一体感が確立されるのだが、このような感情的な一体感は、おそらく人類の歴史においてそうであったように、子どもにおいても観念的な関係に先行して現われるのである。情動の役割は、おそらく、分節言語に先行する表現システムという点にあるのであろう。このシステムは、一種の伝染によって強力な集団的反応を引き起こすのに欠かせないシステムである。情動は、たとえば未開人の儀式にみられるような情動として文明化されていったが、今日でも群衆の集合反応を引き起こす手段として残っている。」（97頁）

　情動による社会性によって、子どもは生まれたときから社会的な存在であるとワロンは見ている。「情動によって、個人は自分自身に属する以前にその環境に属している」（97頁）のだ。だから自我も「意識に最初から備わっているものでなく、ひとつの獲得、ひとつの征服である」（98頁）ということになる。
　もっともワロンの自我論は、子どもに視点が定められていて、社会から見られているという、もう一方の要素については十分ふまえているとは言い難い。しかし、情動論を生かせば、社会からの視線の内実とは、実は、情動だ、ということにならないだろうか。今後の検討課題である。

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Author: admin Published: 2006/1/5 Read 6211 times

ワロンの社会論

第1章 子どもの社会学的研究

1）デュルケムの提起

2）アルプバックスの説

3）ブロンデルの説

4）ゲシュタルト心理学の陥穽

第2章 ピアジェ批判

第1章　子どもの社会学的研究

第2章　ピアジェ批判