　第1次PC講座の趣意書は97年10月付になっています。
　周知のように、この講座は、80年代半ばから構想してきた理論的、政治的、諸問題の解決を「近代に特有な社会的意識諸形態への根底的な批判」に絞り、1年間にわたってハードな研究会をもちました。そしてその成果をふまえ、99年には綱領研究会をたちあげ、20世紀の共産主義運動の総括と21世紀の社会運動の展望について検討してきました。

　99年夏からアソシエ21にかかわり始めました。99年11月7日のアソシエ21関西発足集会を組織する過程で、柄谷行人さんとの出会いがあり、綱領研究会で検討してきた内容を急遽「21世紀の社会運の綱領草案」としてまとめることが出来ました。
　アソシエ21関西では、新設された事務所の運営をめぐる紛争が、スペースAKの空閑さんとの間で起き、スペースAKとは別にアソシエ21関西運営委員会を設立するまで半年間の空白を余儀なくされました。
　とはいえ、2000年3月から、表三郎さんと協働して第2次PC講座を発足させることができました。また、綱領研究会の方も、綱領草案の解説文を作成することを目標に1年間継続することになりました。

　2000年6月に、スタディ・ユニオン http://www.sam.hi-ho.ne.jp/seki/の人たちとの出会いがあり、そこで、地域通貨LETSを京都で立ち上げようという話がまとまったことが、以降の展開にとって決定的でした。2000年8月から、キョートレッツ http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Cosmos/3702/のワークショップを始めましたが、まだ準備段階であるにもかかわらず、LETSでの取引を経験することで、参加者の間に、言葉では表現できないような一体感が生まれてきたのです。そしてそこに、いろんな経歴をもった人々が登場してきました。

　新しい運動が始まろうとしており、新しい世代が運動に登場しようとしている、まさにその現場に立ち会えたことで、私自身の理論的活動も、決定的な転換をはからねばならなくなりました。それは、過去の共産主義運動の総括をふまえた新しい社会運動の方針の提案、という綱領草案の立場から、過去の共産主義運動の経験がなく、従って、総括には何の興味もない人々の立場で、新しい社会運動の方針を考えていくということへの移行でした。
　もちろん、この移行は、すでに総括が出来ていたから可能だったわけですが、新しい立場からすれば、綱領草案の解説文の作成という作業は緊急の課題ではなくなったのでした。

　NHKで放映された「エンデの遺言」がNHK出版から出版され、また、LETSを準備する過程でビデオも見ることができ、今の若者と同じ発想でエンデの『モモ』を読み直してみました。エンデが80年代初頭の対談『オリーブの森で語り合う』で近代の科学的思考を批判して、「新しい思考」を提案していることを知り、この時点で、エンデの提起をふまえ、「新しい思考」を言葉にしようと考えるようになりました。というのも、エンデの提起を私が構想している文化知とのかかわりで捉え直せたからでした。（『ASSB』誌8巻3号4号『モモを読む』参照）そして、エンデに教えられて、ゲーテにまで溯ったとき、新しい地平が見えてきたのでした。
　この新しい地平は、協同主体論の解明ということをテーマに続けてきた第2次PC講座での研究の帰結でもありました。ボッブス、ロック、ルソーの古典的民主主義論やハイエクの自由主義論を研究し、それをふまえて、ブーバーやバフチンの対話論をくぐりぬけてレヴィナスに到達したとき、カントから始まる近代のドイツ観念論を総括し得ると直感したのでした。（レヴィナスについては『ASSB』誌8巻5号参照）そして、カントを研究することで、この総括のカギは、カントの超越論的仮象論にあることがわかったのです。同時代人のゲーテには、このことはよくわかっていたのですね。

　カントについては『ASSB』8巻6号を見ていただくとして、協同組合運動研究会の方で煮詰めてきた「地域エル・コープ」論も、まだ抽象的ですが、一定の方向性を出すことができました。同じく『ASSB』誌8巻6号に掲載した「新しい思考で地域を考える」がそれです。この見地から、第2次PC講座最終回では、「協同と民主主義」というテーマで、この15年間私が考えていた主として実践論にかかわることがらについて整理することができました。

　以上の経過を簡単に整理してみますと、第1次PC講座では「近代に特有な社会的意識諸形態への根底的な批判」をなしとげていくための方法として、科学知に代わる文化知の方法に到達できました。
　次いで行われた綱領研究会では、20世紀の共産主義運動を総括し、「21世紀の社会運動の綱領草案」をまとめることができました。
　そして、以降の活動のなかで、21世紀の社会運動にとってその基本をなす協同主体を形成していく実践的な方針について、いまだ抽象的ですが明らかにすることが出来ました。

　第3次PC講座は、これまでの成果を一般に普及させていくための協働作業を課題にしたいと考えています。実施要項は以下の通りです。講座に出席できない方へも文書の送付によって参加の途を開きます。変わらぬご支援をお願いします。

カリキュラム

全体のテーマ　新しい思考

　　第1回　3月10日カントの科学知批判（『ASSB』8~6号論文）
　　第2回　5月12日存在と意識
　　第3回　7月14日言語のフェティシズム
　　第4回　 9月8日科学的世界観の批判
　　第5回　11月10日外の主体の弁証法
　　第6回　1月12日関係の論理

　次年度は、他者論、対話＝コミュニケーション論、協同主体論で、それぞれ2回ずつの講座を予定しています。

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Author: admin Published: 2006/1/5 Read 2929 times

第3次 政治・文化（PC）講座のご案内 終了！

第3次PC講座開講にあたって

カリキュラム

全体のテーマ 新しい思考

第3次　政治・文化（PC）講座のご案内　終了！

全体のテーマ　新しい思考