2003.5.1　榎原均

　アメリカの大統領府をネオコン（新保守主義者）勢力が占拠し、ついにイラクに対する「ブッシュの戦争」が始まりました。アメリカは国家主権を無視した横暴な戦争行為に踏み切りましたが。このことでグローバリゼーションの旗の下に形成されてきた世界の枠組みの中身が明瞭となりました。

　遺伝子組換食品をめぐる予防原則が実質的同等性か、についてのEUとアメリカの対立で、アメリカがごり押ししてきたものは、多国籍企業による種子支配であり、生物多様性の否定でしたが、これは石油利権とイラク「復興」のビジネスに米・英以外の国の参加を認めない、というブッシュらネオコンの今回の戦後処理と共通しています。
　グローバリゼーションとは米・英国籍の多国籍企業による世界ビジネスの利益の追求であり、アメリカ政府はそのために軍事力の行使も正当であると考えている、このような恐ろしい現実が見えてきたのです。

　軍事力に頼った世界支配という恐ろしい現実は、また、経済的なルールでは世界支配が続きそうにない、というアメリカの弱さの現われではないでしょうか。アメリカはいまや世界最大の債務国であり、かつ一時好転していた財政収支も再び悪化し、レーガン時代の双子の赤字を超える規模で赤字が積み上がってきています。
　このような国民経済上の弱点をカバーしてきたものが、基軸通貨としてのドルと、変動相場制に移行して以降の国際金融市場でのアメリカへの資本の流入でした。
　かつて宮崎義一は、金融自由化はクレジットクランチを招きやすく、それが国民経済を不況に陥れることを明らかにして、「複合不況」が90年代の趨勢になると予測しました。実際に日本はこのとうりになり、「失われた10年」が更に10年を超えて長期化しようとしています。ところがアメリカは金融業の再編をなしとげ、ちょうど日本に10年遅れて株式バブルを実現し、90年代を勝ち組として乗り切りました。だが90年代末にアメリカでもバブルが崩壊し、21世紀に入って「9.11」事件もあり、時代が変わり目に直面し、ネオコンが台頭してきて「永続的な戦争の時代」の幕を開けたのでした。

　日本の90年代の不況は、アメリカの好況とセットになっていました。日本の対外黒字がアメリカの国債を買う事でアメリカの金融市場でアメリカの対外赤字をファイナンスしてアメリカ経済を支えながら、日本経済にとっては自らの投資はドルが安くなることで為替差損を被る、という不利益があり、これが不況の大きな要因となっています。そして日本の長期不況で、さしもののジャパン・マネーもやせ細り、アメリカの赤字を支えられなくなってきました。ウォール街とネオコンは、金融的には日本のマネーを失ってその赤字のファイナンスのためにはアメリカ経済が薄氷を踏むような状態にあり、そして、アメリカからマネー（資本）が流出すれば、ドルも基軸通貨としての役割を保てなくなる、と言う事を知ってしまったのです。

　このような今日のアメリカの経済的な弱さ（寄生性）が、ネオコンをして永続的戦争を選択させた大きな要因です。中国でのSARSの流行もあり、当分世界経済は縮小を余儀なくされるでしょう。そしてこのような事態の進行は、人々の生活防衛の砦としての生活協同組合やワーカーズ・コレクティブの真価が問われる時代に入ったことを意味します。
　グローバリゼーションの勢力が形成している経済圏とは別の経済圏をしっかり拡大していくことで、グローバリゼーションで世界を征服するというアメリカネオコンの野望を打ち砕きましょう。

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Author: admin Published: 2006/1/5 Read 2901 times