2000.2.18　榎原均

　私は、商品所有者が商品に意志を支配されて無意識のうちでの本能的共同行為をとる、ということを、商品から貨幣が生成される過程にのみ限定して使っています。また、論文「文化知の提案」で述べられている他人による意志支配も階級支配のことしか念頭においていません。

　にもかかわらず、伊藤さんは、親子関係とか、教師と学生とかの間の人間関係について私が論じているかのように論点をずらし、そして、この場合には、私の意志支配論が妥当しないから、ということを理由にして、私の綱領的内容の批判としています。

　バフチン流に言えば、言葉はそれが使われるジャンルのなかで、それぞれ特有の意味を持ちます。だから、綱領という政治的文書のなかでつかわれている政治のジャンルに属する言葉を、日常生活といった別のジャンルに移しかえれば、その言葉の意味が変化するのは当たり前のことです。そして、別のジャンルでは、政治のジャンルの言葉の意味が別様になるから、政治のジャンルでのこの言葉の使い方がおかしいと批判されても、私には何とも答えようがありません。綱領批判にせっかくの労力をさいておられるにもかかわらず、現時点では、何がかみ合っていないのか、ということすら不明になってしまうように思われます。今後の議論を稔りのあるものにするために、とりあえず、最終回に「この15年間をふりかえって」と題して、主として協同主体論についての私の見解の変遷について整理しておきました。参照下されば幸いです。

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Author: admin Published: 2006/1/5 Read 2303 times