　サポートセンター準備会発足までの私のワーカーズ・コレクティブのイメージは、「もう一つの働き場」の実現は非常に意義のあることであり、従って、この意義ある事柄を実現するために同志を募る、というものでした。
　実際に同じ意志を持った人たちが集まり、サポートセンター準備会が発足したとき、様々な教室企画をたて、これをワーカーズで運営することで「もう一つの働く場」をつくり出そうとしたのでした。ところが、この試みは、すでに事業として成立していたNSPを別にすれば、うまく行きませんでした。活動の転換をはかるにあたって、何故うまく行かなかったのか、ということについて、総括しておく必要があります。
　まず、「もう一つの働く場」をつくる、ということは、善き意志だけでは実現できない、ということが判明しました。同じ意志を持つ人たちが大勢集まっても、事業は起業できないのです。起業には起業の論理があり、それに十分注意を払わなかったのかも知れません。そこで私は、「仕事は落ちてくるものだ。落ちてきた時に取り組める体制をあらかじめ作っておくことだ」と考え、サポートセンターのメンバー以外の人たちとの連携で仕事づくりについて考えるようになりました。

2）受講生集めから講座を考える

　次に、教室企画がうまく行かなかったことについては、深刻な問題だと考えました。というのは、サポートセンターはNPO法人化を目指すことになりましたが、その際の事業の内容は、社会教育しか妥当せず、そして、社会教育が事業として成立する見通しがなければ、法人格を取得しても事業が欠落してしまう、という事態に見舞われるからでした。この問題については、発想を逆転させる必要がありました。講座を企画するよりも、受講生を集めることが、最初の一歩であることがわかってきたのです。
　NPO法人申請のための事業計画書を作成していたときに、社会教育の内容が問題となり、受講生を集めることから始めよう、と考えていたとき、NPO法人フェルマータから、よすみ総合福祉住宅の構想への参加要請がありました。私は、フェルマータのこの事業に協力することで、サポートセンターの事業の一つの柱がつくれるのではないかと考えて、提案をまとめたのでした。

3）ワーカーズは自衛のプロジェクト

　そして、よすみの住宅にニュースタートの入居者を増やしていく、ということを考える場合に、「もう一つの働く場」の実現が、善いことをしたいという思いから出発するのではなく、やむをえない自衛のプロジェクトであることを明示し、入居者やご両親もこのプロジェクトの主体的参加者であることを知ることが必要だと考えるようになったのです。（「自衛のためのプロジェクト」参照）
　このような構想からすると、サポートセンターが当面集められる受講生は、ひきこもり体験者たちだ、ということになり、そしてそうなると、講座の内容も、知識や技術を与えることよりも、体験学習の側面を重要視していかなければならないことが判明してきました。それで、最初の事業として成立している農業学校について、逆転の発想から、講座のイメージを考えてみました。（「農業講座開講にあたって」参照）
　以上のような私自身の活動の転換にともない、よすみプロジェクトについて別途「何故よすみプロジェクトなのか」を提案します。

4）何故よすみプロジェクトなのか

　サポートセンターは、仕事を選ぼうとすれば、仕事を失うでしょう。他の事業体でもそうですが、偶然与えられた仕事をきっちりこなすことが、事業体の成功の秘訣だと思います。
　逆に、雇われて働く人たちには、職業選択の自由があります。しかしどんな職業に就いても、雇われて働いている、という共通性があり、そこからは逃れられません。
　ワーカーズ・コレクティブは、雇われて働くことに意味を見出せない人たちが集まってつくる働く場ですから、雇用される場合と違って、仕事を自由に選択することはできません。与えられた仕事にしっかり取り組むことが問われます。
　サポートセンターは、ワーカーズ・コレクティブによる起業をサポートする組織です。従って、一つの仕事が与えられ、それを受けようとする人が居る場合、事業計画について問題がなければサポートしていかなければなりません。
　もちろん、その一つの仕事にサポートセンターの全員が参加しなければならない、ということはありません。その仕事を受けるワーカーズに参加するかどうかは、メンバーの自由です。
　そして、よすみプロジェクトによって、サポートセンターの事業の一つの柱が立てば、サポートセンターの他の色々な活動内容も見えてくるでしょう。
　よすみプロジェクトの事業の直接の責任はフェルマータが負っていますが、ニュースタート関西事務局が協力することで、この事業の魅力を増やすことになると思います。ニュースタートやサポートセンターについては、活動の転換について、明確に自覚することが大切です。

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Author: admin Published: 2006/1/5 Read 2842 times