　タイトルは哲学のテーマですが哲学はやりません。政治的センスを取り上げます。政治的というと日本では、人をだますとか、無責任と言った悪い意味で使われる事が多いですが、ここでは、集団をうまく組織して行く能力という本来の意味で使います。
　さて、この掲示板には色々な年代の人が書き込んでいます。人間は悲しいかな自分の持つ観念に合せてしか、外界（他者も含む）について了解する事はできず、かつひとは皆それぞれ唯一性をもち各人各様の観念を持っているから、その了解には必ず誤解の部分を含む事になります。
　そこで問われるのが政治的センスです。606年代の安保闘争や70年代の全共闘運動に関わった人たちは、意思の中での同一性の部分（安保反対とか大学解体とか）が大きく、従って議論する場合差異についてトコトン論じ合いました。そうする事で、同一性の内容をより強く意志統一していたのですね。
　ところが70年代後半からは運動の場面ですら、同一性の領域が縮小して行きました。「大きな物語」はダメで、シングルイッシュー（ごみの処分場反対とか、安全な食品がほしいとか）にもとづいた運動が多様な形で起きるようになりました。そして社会状況としては「新人類」という言葉に象徴されるように、それぞれの個性（差異）が同一性よりも上位に来るようになったのです。
　80年代後半からは、政治運動らしい運動は起こらず、新しい社会運動（刷新された協同組合運動も含む）が起きてきますが、時代をリードするほどの力はなく、社会状況では「オタク」が登場し、新興宗教のブームがおきます。現在まで続くこの時期に個性（差異）が神性にまで高められ、個の唯一性が人間のアイデンテイテイとなっているように私には思われます。こうなると同一性の領域は意識されなくなります。
　このような状況で、差異に付いて議論すると、同一性の領域がないものですから、人々は単に干渉されたとしか感じません。「地球村」という環境NGOがありますが、ここの人たちは「批判はしない、気づくのを待つ」という新しい政治的センスでもって、安保・全共闘世代の差異を議論する政治的センスに対抗しました。これはこれで一定の正当性がありましたが、しかし、同一性に付いては思想的なものに限定されているように思われます。
　この掲示板では「引きこもりの社会参加」という同一性があります。それに新しく、ワーカーズコレクテイブという問題が付け加わりました。この同一性に付いて確認しあえる人々のうちでは差異に付いての議論がうまく機能し、同一性の内容を豊かにして行くでしょうが、そうでない人々に対しては、差異に付いての議論がうまく進まない。
　そこで差異性は残しつつ同一性に付いての議論を進めて行くという政治的センスを期待します。異なる言語を持つ話者が互いの理解を収斂させる時のように。[2003/01/30 16:18:36]

　相互の理解を収斂させる、と私は書きました。それが意見を収斂させるというように受け取られてしまっています。これはまた別の事ですね。私はこの掲示板では、とりあえず、理解を収斂させる事を共通の了解事項にしてほしいと思います。意見の収斂は実現すればすばらしいですが、それを目的にはしない方がいいように思います。[2003/01/31 22:49:46]

2）ワーカーズコレクティブは自衛

　60年代までは、日本で人々は集団で生活していました。ところが80年代以降はもちろん皆集団に属しているのですが、帰属意識がなくなったようです。生活のほとんどがお金で解決するので他者に頼る必要がなくなったのですね。家族も単なるねぐらで皆別別に生活している。自立した個人という意識が生まれ、他人に頼らず生きて行くことが美徳とされる。でもお金は実はものを介した人間の関係なんですね。しかしそのようには見えず、生活のためにはお金があればいいと考えてお金に執着します。お金にはお金の法則があり、これは人間的な関係とはズレています。お金のいう事に従えば人間的な関係が損なわれるといった事態も生まれます。
　こんな状態で今日の人々は集団で生活する力を失っているように私には思えます。バラバラな個人が集められているだけで集団として機能していない。集団に属している人たちがワーカーズコレクティブを作るのではなくて、バラバラの個人が集団を作ろうとしているのですね。この意味では皆「小市民」です。あるいは自営業すら出来なくなっている「小市民」ですね。もう集団を作って自衛するしかないのでは、と私は考えています。[2003/01/28 20:51:46]

��ε��

Return to Category | Return To Main Index

Author: admin Published: 2006/1/5 Read 2677 times