1　LETSystemの起源とあゆみ

2　LETSystemの利点:

3　LETSystemの基本原理

4　LETSystemとローカルマネー

5　管理運営

6　取引の仕組み

7　LETSystemのチャージ

8　法的な問題

9　税の問題

10　情報の秘密性

11　苦情

12　Multi-LETSystem

13　ユーザー同意書

1　LETSystemの起源とあゆみ

●LETSystemの起源

　最初の LETSystemはカナダブリティッシュコロンビアコモックスヴァレーで1983年に立ちあがった。当初からマイケルリントンが開発。アメリカで普及しているバーター取引に学び、コミュニティで使用するシステムを設計。

●LETSystemの発展

　80年代は、財源が少ないことに加え、ユーザーの信用が十分でなかったために、成長は緩やかなものであった。その後、ニュージーランドやオーストラリアにも広まり、87年からは安定した成長期に入る。英国では、1991年に7システムしかなかったものが、翌年の2月には20システムに、さらに1994年2月には 200にまで増えた。現在、全世界的には少なくとも 500の LETSystemが動いている。そのすべての基礎になっているのはコモックスヴァレーのプロトタイプ。

●LETSystemの未来

　LETSystem は、10年後には英国の経済の30％から40％を占めるようになることが見込まれる。現在、地方行政、政党および草の根のコミュニティ団体から大きな関心が寄せられている。

2　LETSystemの利点

　LETSystem は例外なく共同体のすべての部分に利益をもたらす。

　現行の国民通貨は不平等をもたらす。LETSystemは個人の共同体への寄与を評価する。

　LETSystem の利益は誰かの不利益のうえに生ずるものではない。非競争的。

　LETSystem の利益は、知的な共同、協働、互恵によってもたらされるもの。

個人にとって

　より自分を働かせる機会

　もっている能力すべてを活かす機会

　訓練や柔軟に個人的な財力を用いることによる新しい能力開発の機会

コミュニティーにとって

　共同体意識と協調の精神の向上

　独創性のあるコミュニティー作りを計画し実行する

　互いによりよい生活環境を創出する

　よりよい施設づくり、個人のヘルスケア環境

　犯罪、破壊のない地域環境

ビジネスにとって

　経営上のコスト低減

　現金循環が容易になる

　雇用意欲の向上、休業が少なくなる

　安全コストの低減

　地域の競争力の向上

　コミュニティーとの密接な関係

非営利機関にとって

　地方の企業からローカルマネーで出資金を貰う可能性

　現金への依存度を軽減

　ボランティアや受益者に向けられる現金財源の増加

3　LETSystemの基本原理

3つの基本原理

●コミュニティー

　特定の誰かに所有権なし

●個人

　LETSystem参加者個人間の約束にもとづいて個人がお金を発行する。

　第三者のコントロールはない。

●実用性

　国民通貨へのリンク。単位は国民通貨と同じ。

特徴

（1）管理運営は非営利でその費用をLETSystemで出す。

（2）いかなる時も合意。取引に対する強制はない。

　LETSystemの金を扱う主体はあくまでユーザー個人。

（3）最初はゼロからスタートで、預金も発行もない。

（4）主要な情報（バランス、参加度＝取引頻度など）はユーザーに公開されている。

（5）単位はポンドスターリングと同じ。あなたの金はあなたのもの。利子はない。

4　LETSystemとローカルマネー

　売買の簡単な方法。ユーザーが目録（directory）に売りまたは買いの品目を掲示する。ユーザーはIDのある口座を持つ。利子なし。借金へのペナルティーなし。

　借り→コミットメント（commitment）、貸し→感謝（acknowledgement）と呼ばれる。

　取引はコンピュータで記録。月ごとに取引の明細がユーザに知らされる。

5　管理運営

（1）LETSystemはユーザー個人の自由なassociation

（2）ユーザーと運営者の関係は同意書のとおり。

（3）執事（Steward）がLETSystem全体の操作、まとまりに対する責任者

　執事は記録調整者（Recording Coordinator）に口座の管理を任せる。

（4）ユーザーは執事や記録調整者への助言グループをつくる。

（5）報酬をもらうのは記録調整者だけ。ローカルマネーで。

6　取引の仕組み

　買う者が目録をみて売る者へ連絡。

　両者の間で値段の交渉。一般にはローカルマネーと現金との両方での支払い。

　買う者の口座のローカルマネーが売る者の口座へ移動。

一般的な方法

　電話で登記人（Registry）へ連絡

　小売票に書きこんで郵送またはファクスで登記人へ

　売る者が買う者から小切手を与えられてそれを登記人へ

※必要事項

　買う者のID　売る者のID　金額

　どのシステムか（Multi-LETSystemのなかの）品目（optional）

　記録調整者がコンピュータに記録

7　LETSystemのチャージ

Greater Manchester LETSystemの例
	登記手数料	ビジネスチャージ	付加価値税	取引手数料	取引明細書料	目録への掲載料
一般ユーザー	10stg （一度だけ）	‐	‐	10p	50p	無料
ビジネスユーザー	10stg （一度だけ）	50stg+50gm （一度だけ）	○	10p	50p	無料

8　法的な問題　9　税の問題

　LETSystemは英国の税体系に則っている。

所得税と付加価値税

　当局はLETSystemでの取引を普通の国民通貨の場合と同様に扱っている。

　所得税も付加価値税もスターリングで支払われる。

　英国の内国税歳入庁は取引を二つに別けて扱う

　　●商売　　付加価値税課税の対象

　　●社会的な交換（Social exchange）　非課税

　納税はユーザーの責任。LETSystemの運営者が当局へ届けたりはしない。

　ただし、当局が正規の手続きで個人の情報公開を求めてくることがある。

　管理運営は非営利ゆえ非課税。

行政との関係

●国

　LETSystemは歳入、予算、計画に大きな影響を与えるので中央政府も強く注目。政府は自らLETSystemを創始しようとするべきではない。協力、便をはかる、コミュニケーション、経済政策のみなおしを。

●地方行政

　融資、開発コスト負担や財源を用意することなど、積極的なサポートが可能。ローカルマネーでの納税を認め、地方行政内部でそれを使うことを（われわれは）提案する。

10　情報の秘密性

　登記人はユーザーの情報を守秘する。

　例外

　　他のユーザーの照会に応じて口座残高と取引実績を開示

　　法の命により。税調査など

　Office of Data Protectionに情報を登録することもある。その場合はこちらへ照会。

　目録については、公開が前提で記入。

11　苦情

　登記人に関する苦情は登記人代表（Registry Steward）に直接書面で。

　（1）登記人は調整機関ではない。

　（2）登記人はユーザーの行動に対しては責任を負わない。

　（3）登記人にユーザー間の紛争を仲裁する義務はない。

　（4）登記人は商品およびサービスの品質、安全性についての責任は負わない。買う者の責任である。

　（5）目録とその悪用に関する苦情は執事へ。

12　Multi-LETSystem

　Multi-LETSystemはLETSystemの可能性を広げる。

　様々な種類、規模のコミュニティーの並存　（労働、レジャー、家族、宗教、教育、都市規模の大きなコミュニティー、ローカルな小さなコミュニティー、等々）

　それぞれのコミュニティーの規模や特性に適したシステムがあり、それぞれの中で固有の通貨が流通。

　これらの諸コミュニティー＝諸システムの統合 → Multi-LETSystem

　システム間を横断しての取引も可能。

　登記人はそれぞれのシステムからは独立した存在。

　A LETSystemの執事（Stewards）および助言者（Advisers）はそれぞれのシステムの中からの参加。

　ユーザーは少なくともひとつのシステムに属する。

　IDはインターネットアドレスのような配列。それぞれのシステムはIDをもつ。

　　例　spodeというmy IDをもつ人がthe Greater Manchester LETSystem

　　Registry（gmlr）というシステムに所属している場合、その人のアドレスはspode@gm

　他のシステムで口座を開いてもアドレスは変わらない。

13　ユーザー同意書

（1）LETSystemはユーザー個人の自由なassociationにもとづく。登記人はユーザーの取引のための情報交換を保証し、口座を維持する。ユーザーは登録調整者に口座の維持を任せる。ユーザーはまた、この同意書に則って執事に責任をもたせる。

（2）ユーザーはお互いの取引のために口座をつかう。

（3）記録調整者はユーザーが支払いを認めたときに限って口座のお金を移す。

（4）執事は、不適切と思われるacknowledgementの登録を断るよう記録調整者に指示する。

（5）単位はポンド・スターリングと同じ

（6）ユーザーは他のユーザーの口座残高や取引実績を知ることができる。

（7a）納税義務はユーザーの取引に伴うもの。ユーザーが自分でやる。運営者には徴税や申告の義務なし。

（7b）ユーザー間の紹介に際しては、品の価格、状態、品質についての保証や評価は明示されない。

（7c）ユーザーは取引の情報がコンピュータ上に記録され、保存されることに同意する。口座残高や取引実績の他の情報は守秘されるが、合法的に開示される場合は登記人がその責任を問われることはない。

（8）記録調整者にはユーザーの口座からローカルマネーでチャージを集める権限をもつ。割合は、登記人代表（Registry Steward）が評価する。

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Author: admin Published: 2006/11/27 Read 2864 times

LETSystem－A Guide 2000.8.10 船場 潤之（訳）

1 LETSystemの起源とあゆみ

●LETSystemの起源

●LETSystemの発展

●LETSystemの未来

2 LETSystemの利点

個人にとって

コミュニティーにとって

ビジネスにとって

非営利機関にとって

3 LETSystemの基本原理

3つの基本原理

●コミュニティー

●個人

●実用性

特徴

4 LETSystemとローカルマネー

5 管理運営

6 取引の仕組み

7 LETSystemのチャージ

8 法的な問題 9 税の問題