　80年代後半に価値形態の秘密を解読して、商品からの貨幣の生成が商品所有者の無意識のうちでの本能的共同行為によることを知る。（『価値形態・物象化・物神性』参照）
　この事が判明すると、商品・貨幣を廃絶する、という共産主義運動の「まず政治権力を奪取してからしか社会革命は始まらない」という従来の戦術は政治という意志の力で、無意識的な物象による意志支配をなくそうという背理をかかえていたことを知り、この問題をテーゼにまとめ、1988年12月に「緊急の課題」をまとめる。
　以降、協同組合運動の側に身を置きながら、新たな社会革命の綱領の内容を模索。レイドロウ報告（『西暦2000年における協同組合』日本経済評論社）に出会い、モンドラゴン生産協同組合が大きく評価されていることを知り、生活クラブのワーカーズ・コレクティブの人達が求めている「もう一つの働き方」とは、剰余価値の生産にストップをかけることで、社会革命の戦術の柱であると考えるようになる。（『共産主義』21号）そして、モンドラゴンの媒介者であったアリスメンディアリエタ神父が、資本家企業に負けないだけの投資を行うことを闘争として提起することで、資本家企業に雇われない「もう一つの働き方」を社会革命の戦術として具体化していることを1994年に発見する。
　97年11月から開講した第一次PC講座で、マルクスの価値形態論のメッセージを広めていく方法に気付き、98年に文化知の方法を定式化する。これは、マルクスが価値形態の解読に用いた方法を抽出し、言語や社会や科学といった人間の社会関係を解明していく実践として、アソシエ21関西のプレ講座で試みた。
　プレ講座の前にアソシエ21の関係で、柄谷行人さんと出会い、最終消費市場で消費者が資本家の商品を買わなければ剰余価値は実現されないことから消費協同組合の意義づけをしていることを知り、また、LETSについて研究するよう薦められる。そして、資本の生産過程、流通過程、総過程の三部面での脱物象化された、もう一つのシステムの像が浮かび上がって来て、新たな社会革命の綱領の内容が確定する。

2）草案の解説

a）資本制的外被の社会化

　草案の冒頭（1）に資本制的生産の発展の特徴を資本制的外被の社会化と見ることで、草案を一気に仕上げられる。
　出所は『資本論』第1部24章7節。これの反面解釈。
　宇野派にはこの考え方がなく、そのため、正村は、マルクス批判へと行ってしまう。

b）変動相場制への移行

　草案（3）ユーロダラー市場をどう捉えるか。これは巨大な民間の国際金融市場。80年代にオンラインシステムで結びつけられることで、世界単一の資本市場が形成された。

c）信用資本主義の段階規定

　草案（6）宇野派には、利子生み資本論がなく銀行信用論も遊休資金のたらい回し論で、信用創造論が欠落。『資本論』第3部のマルクスの手稿表題は「総過程の諸形象化」。利子生み資本＝資本の商品化＝資本としての貨幣の商品化＝マニドキャピタルの諸形態がどのようにして形成されるかを信用論で問題にすべき。土台としての貨幣取扱業＝支払決済システム及び商業信用と資本の商品化による架空資本への形成とは別の次元のこと。
　架空資本の蓄積が現実資本の蓄積から完全に独立し、逆に後者を従属させる段階を信用資本主義と捉える。具体的分析は今後の課題。