office-ebara - おおいに論争を-論争のページ-森　真澄さんへの回答

森　真澄さま

2007年9月30日境　毅

　拙著に対する「抗議文」受取っています。まずは批判の労をとってくださったことに感謝します。
　貴兄に指摘されて、3箇所の引用文について再度検討してみました。しかし貴兄の指摘するような「全くの誤解」という評価には当たらないと考えています。それはシュタイナーを解釈する貴兄と私の間の評価軸の違いからもたらされる解釈の相違ではないでしょうか。
　まず最初の引用部分についてですが、労働問題の解決についてシュタイナーは「共同体生活へ正しく組み込まれた労働関係」（55頁）と述べているわけですから、それは現実の経済過程から労働者を引き剥がして、共同体生活へと導きいれることを意味していて、「当時の社会システム」には手を触れずにその外に共同体を作ろうとしていたと考えるしかありません。もちろんこの方法も社会変革として意義を持つという考えもあるでしょうが、「経済の影響が圧倒的」と考えているエンデとの対比では私のような考えも成立しうると思います。
　次に第二・第三の引用についてですが、シュタイナー自身「以上に述べたことは決してユートピアではなく」（112頁）と述べてはいますが、「実行しうる事柄」（112頁）といえばさしあたり、共同体の形成とシュタイナー教育でしょう。このような方法は、それこそシュタイナーの社会理念の正しさを確信できないと実行できないものではないでしょうか。
　貴兄のシュタイナーに対する評価軸は、人智学と社会三層化思想とを切り離して、後者に依拠しようとするものですね。しかし、シュタイナー自身は選集第九巻、「社会の未来」で社会三層化思想について述べていますが、その冒頭で「現代社会の諸問題を取り上げるとき、これまでも私は常に、霊学の観点から論を進めてきました。」（7頁）と述べています。私としてはシュタイナーの思想は人智学の観点を除外できないという評価軸を立てるしかありません。
　以上簡単ですが「抗議文」にコメントしてみました。
　さて今後のことですが、貴兄の「抗議文」をそのままで私のHPに掲載することについては何ら差支えありません。もちろん投稿用に書き直してくださってもよろしいのです。この件につきご検討ください。
　今回はこれで失礼させていただきます。

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Author: ebara Published: 2007/10/9 Read 3853 times