　組織というと学校や会社や行政や政党のそれしか思い当らない、というのが今日の人たちではないでしょうか。
　政党や宗教団体は別にして、これらの組織は、規律は求められますが、構成員に対して意志の統一を要求しはしません。
　他方で、政党の場合は、政治的意志の統一を要求し、宗教団体の場合、信仰の内容を統一しようとします。
　サポートセンターは、事業体ですが、同時に、それは運動体でもあり、何らかの意志の統一が要求されます。いま意志の統一が要求されない組織と要求される組織とに区分してみましたが、サポートセンターは、後者に属することになります。
　そこで、政党や宗教団体の場合とサポートセンターの場合とで、意志の統一の仕方がどのように異なっているか注目してみましょう。政党の場合も宗教団体の場合も、個人の唯一性を認めず、同一化をおし進めます。しかし、サポートセンターは、個人の唯一性を残したまま、意志の統一を実現出来るシステムです。というのも、サポートセンターは、意志の統一を不可避とする運動が事業として展開されていくからです。

2）事業としての運動

　運動が事業として展開される、ということは、一体どういうことでしょうか。
　今日の社会では、個人が昔の共同体から切り離され、居住区としての地域での人間関係はなくなってきています。しかし、人間は社会的動物ですから、社会を形成しなければ生きていけません。
　今日では、社会の形成は、お金にゆだねられているといってよいでしょう。お金が動くことで、現代人の社会生活が結ばれています。サポートセンターの目的は「もう一つの働き方」をつくり出すことでした。それは、お金にしばられた働き方を止め、自ら出資し事業を運営していくことですから、「もう一つの働き方」をつくり出そうとする運動が、事業として展開される事になります。そうなると、社会の形成をお金にゆだねておいてはよくないですね。
　サポートセンターの会員自身が意識的に社会を形成していかないと、目的自体が実現していきません。

3）新しい社会をどこから発想するか

　では、サポートセンターの会員がつくり出す社会とは、どのようなものでしょうか。とりあえずは「もう一つの働く場」をつくっていくために、相互にサポートし合うことから始まります。この新しい社会を、企業や市場といった今日の社会と比較してみましょう。
　企業や市場で人々を結びつけているものは、言うまでもなく、お金です。企業家は、お金を増やすということを目的に事業をやればいいし、働く側も、生活のためにお金を稼がなければならない。20世紀の後半に出来上がり、たかだか30年位しか続いていないこのような社会が、ずっと続くかのように、つい思ってしまいます。ある意味では、お金が人々を結びつけていることで、それまでの社会と比べて、生活をしていく上で人間関係にわずらわされなくてすむ、というところがあるし、自己責任という、ある意味では気持ちのいい倫理観に従っておればよかった。
　サポートセンターがつくり出す新しい社会とは、もちろん昔の共同体に戻ろう、ということではないでしょう。
　今日の社会で形成されている個人の人格としての独立は継承すべきものです。基本的な発想としては、現存する社会が、持続可能ではなくなっていること、そのことから出てきている様々な社会病理や社会問題を独自に解決していこうとするところにおかれるべきでしょう。現実に、もう一つの働く場は、社会病理や社会問題の現場にこそ開かれているのですね。

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Author: admin Published: 2006/1/5 Read 2538 times