2001.5.27　榎原均

　アソシエ21関西運営委員会をたちあげたとき、私は新しい社会運動を始めることに主眼を置いていました。〈企業家100人のアソシエ21関西を〉という呼びかけも、そのための布陣と考えていました。もっとも、万事が横並び主義、いつも横目で他人の動きを見ているような日本社会で、普通の市民が飛び出せばたちまちレッテルを貼られて孤立させられてしまう、という現実があるなかで、新しい社会運動の開始には時間がかかると考えていました。
　ところが、新しい社会運動は、すでに始まっていたのですね。既成の資本家的企業とは別の事業を立ち上げることで、参加者が個の唯一性を残したままで協同主体を形成することができる。これが、この間の活動にかかわった際の私の得た教訓ですが、これをもっと別の形で述べることが、今必要になってきていると考えています。

　一つは、フリーターズ・ネットワークやフリーターズ・ユニオン結成の動きに示されているように、階層の運動が起きようとしています。層としての運動も、もちろん運動を構成する個人の意志によって担われているのですが、にもかかわらず、それを超えた発展法則に支配されているのですね。ある場合には、個人の意志とはかかわりなく運動の方が進んでしまい、逆に個人は大衆運動の論理の方に支配されてしまう。でもこんな運動は60年安保闘争や70年全共闘運動以降はあまり見られません。
　けれども、私の見ることろ、このタイプの社会運動が始まろうをしています。
　だとすると、運動の担い手たちに何が問われるのでしょうか。

　このタイプの運動が持続していなかったことで、これまでの運動は、個人(政党も含め）の意志に発した運動でした。個人は自分の運動方針を提起し運動を起こそうとしてきたのですが、このタイプの運動にはなってこなかったのですね。それで、活動家たちは、このタイプの運動の展開を諦めてしまい、このタイプの運動に対する準備をしていないように思われます。

　ではどのような準備が、今、問われているのでしょうか。フリーターの運動に則して言えば、まず、フリーターという社会階層の構成員が自分たちを階層として意識することが出来るような仕掛けをつくらなければならないでしょう。
　個の絶対的他性ということを運動の組織論の土台に置いて考えると、何らかの基調報告のもとにフリーター論についての合意を意志統一する、というやり方はそぐわないでしょう。むしろ、各人が各様のフリーター論を展開し、それらが並存しつつ、一つの主体を形成してしまっている、そのような仕掛けをつくることが問われているのです。

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Author: admin Published: 2006/1/5 Read 3524 times