　前回ライフスタイルについて書きましたが、その時に話題となったことは、企業の寿命も意外に短い、ということでした。

　たとえば、主婦の店として1957年にわずか27坪の店を大阪・千林駅前に開いたダイエーは1972年には売上高で三越を抑え、業界トップに立ち、以降も日本のスーパーの代表として、流通革命の担い手ともてはやされてきました。ところが、今日では巨額の有利子負債にあえぎ、リストラと税金投入で何とか倒産をまぬがれていますが、新聞報道によれば、創業者の中内功さんも蓄積していた私財をみぐるみはぎとられ、丸裸で放り出されようとしています。この間ダイエーなどの流通業が成功し、成長していくということの裏面では、昔からあった街の商店街をさびれさせ、小売店はコンビニに模様替えしてかろうじて生き残り、シャッターの閉じた店がならぶ町内会は青息吐息になっています。

　でも勝ち組みの方も、あっけない結末をむかえようとしています。ダイエーの場合はまだ30年あまりの命脈がありましたが、しかし株式会社の寿命は、ますます短くなっているように思われます。ベンチャービジネスは別にして、ユニクロのブランドでカジュアルウエアーで圧勝したファーストリーディング社が本格的に多店舗チェーン展開を始めたのは1991年のことでした。以降、10年間平均40%の成長をつづけ、売上では10年間で27倍を達成しましたが、今日、もはや天井に頭を打ちつけ、迷走を始めています。

　そこで思い出されるのは「収奪者が収奪される」という「資本論」の一文ですが、いま進行しているものは、これまで小経営を収奪してきた大企業が、生産部門や流通部門や金融部門を問わず、国際金融市場を通じてグローバルな金融資本に収奪されていることです。そしてグローバルな金融資本の実体は個別企業というよりも、一つのシステムになっています。つまり、個人の預金口座から、企業の口座まで含めた支払い決済システムがオンラインで結ばれたことで、このシステムが巨大な額の金融取引（お金の貸し借り）の場として成長してきたのです。日本の生産企業や流通企業さらには金融業にとりついているものは不良資産です。インフレと地価の上昇という高度成長期には、借金をして企業規模を拡大していかなければ競争に勝てませんでした。こうした構図を地でいったのがダイエーでした。ところがバブルの崩壊で地価が下落し、物価も下がるデフレになると借金が重荷になったのです。

　こうして、失われた10年といわれている90年代に、日本の企業はリストラをはかり、企業の収益を改善しようと努力したのですが、しかし、国際金融市場を通してグローバルな金融資本にどんどん金を吸い取られていて、改善の効果をあげられませんでした。

　ここまで事態が単純になると、この最後の収奪者となっている国際金融システムを逆に収奪し返すことで終わりにすることも可能になってきているように思いますが、これついてはもっと慎重に考えることにしましょう。

　今日のテーマは、収奪されたあとに何が残されているか、という点です。まさか直接に命まで収奪することは出来ませんが、残されたのは生活手段と地域の人間関係から切り離された生身の個人核家族ですね。この生身の個人になにが出来るのでしょうか、引き続き考えていきましょう。

��ε��

Return to Category | Return To Main Index

Author: admin Published: 2006/1/5 Read 2712 times