　新しい社会運動と言う言葉は日本でも1980年代中頃から使われるようになりました。もともとは1968年のフランスのいわゆる「五月革命」を起源とし、西ヨーロッパで始まった新しいタイプの社会運動をさしています。反核、エコロジー、フェミニズムが一体となったネットワーク型の運動で、都市の空き家や空き工場に勝手に住み込んだアウトノミア運動も一つの典型でした。政治的には緑の党の結成にむかい、一番成功したのは旧西ドイツです。でも運動の様相は国によって多様で、EUが結成されたとき、「社会的経済」という主張がかかげられましたが、これはフランスやイタリアなどラテン系諸国にしか広まらなかったようです。

　日本では言葉は使われるようになりましたが、緑の党の結成に失敗し、政界では共産党を除いて総与党化していくなかで、新しい社会運動の政治的代表部は出来ないまま、90年代の失われた10年を迎えることになります。
　政界を見れば、新しい社会運動に対応する動きを見つけ出すのは困難ですが、しかし運動の現場を見れば、新しい社会運動は、ずい分広がっています。日本独特の班による共同購入を導入した消費生活協同組合は70年代から80年代の20年間急成長を続け、生協に集まった母親達が種種の運動に取り組む中、80年代初めにはワーカーズ・コレクティブという「もう一つの働き方」での働く場づくりに取り組むようになりました。これとは別に90年代後半に全日自労という労働組合が事業を継続していくために事業団を結成しましたが、これも80年代後半には組織の協同組合化をはかり、日本労働者生産協同組合連合会を結成しています。

　失われた10年は、ワーカーズ・コレクティブや事業団にとっては追い風の10年でした。政治的代表部が未結成のなかで、現場が拡大していきましたから、今日の新しい社会運動は、階層別になっていて、相互の連携はあまりないようです。しかし、90年代末になって、色々な分野から、新しい社会運動をめざした動きがおこり始めてきています。

　その一つの現れとして、1999年には、知識人の協働をめざして、アソシエ21が発足しました。また、新しい協同組合運動をめざしたNAMも、柄谷行人さんの呼びかけで、2000年に発足しています。
　このような動きと軌を一にして、従来は運動に登場できなかった「フリーター」層が、いまやっと新しい社会運動の担い手として起ちあがりつつあります。「みにくいアヒルの子」と言えばアヒルには悪いですが、飛べないと思い込んでいた「フリーター」たちが、いま飛び立とうとしています。

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Author: admin Published: 2006/1/5 Read 3128 times